「湯を沸かすほどの熱い愛」の中野量太監督が金賞受賞で号泣!「新藤兼人賞2016」授賞式(2016.12.02)
日本映画の独立プロダクション50社によって組織される日本映画製作者協会が授与する「新藤兼人賞2016」の授賞式が12月2日(金)に行われ、「湯を沸かすほどの熱い愛」の中野量太監督が金賞、「ケンとカズ」の小路紘史監督が銀賞、「君の名は。」の川口典孝氏がプロデューサー賞を受賞した。中野監督は9年ほど前にこの授賞式を見学に来た際、金賞、銀賞の受賞監督たちが光輝いて見えたと語り、「いつか自分もあの舞台に立てたらと思って・・・」と語り出すと、様々な感情が込み上げてしまったのか顔を真っ赤にして号泣し、感動の授賞式となった。
今年で21回目を迎える「新藤兼人賞」は、日本映画製作者協会に所属するプロデューサーが「この監督と組んで仕事をしてみたい」、「今後この監督に映画を作らせてみたい」という観点から、その年、最も優れた新人監督(長編処女作より3作品まで)に授与する賞。現役プロデューサーのみが審査員を務める日本で唯一の新人監督賞である。本年度は2015年12月から2016年11月までに公開された新人監督作品180本から選ばれた。
授賞式開催にあたり、日本映画製作者協会の新藤次郎代表理事は、「この賞は新藤兼人が常にインディペンデントらしい、新しくて凄い映画を作りたいという想いと、日本映画界を育てていきたいという想いから設立した賞で、今日、受賞されるお三方も、そういう意味で素晴らしいと認められたと言っていいと思います。厳しい映画界で、これで終わってしまう方、これから代表作を作る方もいるでしょう。しかし、何よりもここに集まっていただき、賞をお渡しできることを幸せに思います」と挨拶した。
“死にゆく母と、残される家族が紡ぎ出す愛”という普遍的なテーマを描き出した中野監督は、涙が込み上げてなかなかスピーチを始めることができなかったが、「挫折して映画からドロップアウトした時も支えてくれるプロデューサーがいて、今回の『湯を沸かす』もオリジナル脚本で作ろうとプロデューサーが言って下さり、そういう方々への恩返しをしたいと懸命に作りました。映画はプロデューサーがいないと成立しません。そんなプロデューサーの方々が選んでくださった賞を受賞でき、本当に嬉しいです。これからもこの賞に恥じないよう頑張りますので、応援していただければと思います!」と力強く感謝した。
裏社会でしか生きられない男たちの姿を描いた「ケンとカズ」を自主制作で作り上げた小路監督は、「僕も泣く用意をしていたのですが・・・」と中野監督の号泣っぷりをちゃかしつつも、「僕が卒業した東京フィルムセンター映画・俳優専門学校が機材や人員、宣伝の協力をして下さり、感謝しています。いとこで僕のお兄ちゃん的存在の山本周平が、カメラマンとして入ってくれたこともあり、ここまでやって来られたと思っています。4年間つきあってくれた主演のカトウシンスケと毎熊克哉には感謝してもしきれないです。たくさんの人たちの応援があっての賞なので、その人たちのためにも頑張っていきます」と真摯に挨拶した。
昨年から「SARVH賞」に代わって設立されたプロデューサー賞を、今年の大ヒット作「君の名は。」の製作で受賞したコミックス・ウェーブ・フィルム代表取締役の川口氏は「新海誠監督とは、彼が28歳の時に出会い、気が付いたら僕もアニメ会社の社長になっていました。彼には人を巻き込む力があって、2人3脚でやってきたと言われていますが、仲間が1人、2人と増え、今では30人くらいになり、今日はその30人を代表して賞をいただいています。『君の名は。』がこんなにヒットするとは誰も思っていなかったんですが、たくさんの方々に観ていただき、賞までいただき大変光栄です。これからも新海監督と頑張っていきます」と決意を新たにした。
最後に乾杯の音頭をとった俳優であり監督の津川雅彦も『君の名は。』を観たそうで、「日本映画界に喝を入れてくれた。これで日本映画界も元気が出たと思います」と評価しつつも、インディペンデントの映画会社にとって厳しい映画界の現状についても言及し、「配給会社はホクホクでも、製作側は儲からない。日本映画の素晴らしさは安く作りながら、いい作品を作る小技というか、プライドというか、そういう勤勉さで映画界を育てて欲しい」と明かし、さらに中野監督へは「爽快な号泣っぷりで、僕も号泣しなきゃいけないなと思ったよ。こんな感性を持つ監督がまだいることが本当に嬉しい」と笑顔で語りかけた。