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第1回木下グループ新人監督賞、グランプリは山田篤宏監督作「AWAKE(仮題)」が受賞(2017.07.26)

映画配給会社「キノフィルムズ」を映像コンテンツ事業に持つ木下グループは、映画業界の新しい才能を発掘するべく「木下グループ新人監督賞」を設立。その記念すべき第1回授賞式が7月26日(水)に行われ、応募総数241作品の中から第1次審査を通過した10人の新人監督及び作品を、製作、宣伝、配給と様々な角度から審査員長の河瀬直美監督と共に厳正なる審査を行った結果、グランプリに山田篤宏監督「AWAKE(仮題)」、準グランプリに荒木伸二監督「人数の町」が決定した。

本賞は、プロ・アマ問わず、現実的な映画化を念頭に置いた企画を募集し、受賞作品はキノフィルムズが、開発・制作・劇場公開を担当。商業映画としてのクオリティを確保するため5000万円を上限とした適正な製作費をプロデューサーが決め、それとは別にグランプリに賞金50万円、準グランプリに賞金25万円を授与するというもの。選ばれた2作品は来年の劇場公開を目指してキャスティングや制作が行われていく。

キノフィルムズの武部由実子社長は「洋画の買付けで様々な国の新人監督作品から刺激を受けるのですが、日本国内では累計何千万部のコミックや直木賞受賞のベストセラーといった作品以外は映画化されないという現実もあり、この先、映画業界はどうなっていくのか?クリエイターをどうやって輩出したらいいのか?常々考えておりました。オリジナルの映画が作り辛く、お客様を呼ぶこともままならない現状を悲観するのではなく、我々自らが新しい監督と才能を世に輩出する存在になりたいと考えております」と挨拶した。

グランプリの山田監督による「AWAKE(仮題)」は、天才棋士と謳われる青年とAI将棋で天才に挑む青年という、子どもの頃から共にプロ棋士を目指してきたライバル2人の人間ドラマを描き出している。河瀬審査員長は寸評として「棋士とAIの対決という実際の出来事をベースに、選ばれし者と選ばれなかった者の間に横たわる違いや葛藤を丁寧に掬い上げ、人間ドラマに昇華させた山田監督の手腕に期待」とし、キノフィルムズも「最終審査に残った10作品の中では最もエンターテイメント性が高い。タイムリーなモチーフではあるが、描かれているテーマは非常に普遍的なものであり、感動作に仕上がっている」としている。

山田監督は、ニューヨーク大学で映画を学び、卒業制作である自主映画「My First kiss」が「第3回山形国際ムービーフェスティバル」でグランプリを獲得。そのスカラシップで制作した長編映画「ハッピーエンディング」は2009年「オースティン映画祭」長編映画部門で観客賞を受賞し、各国の映画祭でも上映された。現在は乃木坂46「君は僕と会わないほうがよかったのかな」などのミュージックビデオやTVドキュメンタリーなどの映像ディレクターとして活躍し、舞台収録の演出なども手掛けている。

2015年に行われた「将棋電王戦」の一局を基に、オリジナルストーリーを書き上げた山田監督は「脚本を書くのは苦手なのですが、選んでいただけて嬉しいです。商業映画を作りたいと思ってきたので、ここを一つの通過点とし、最終的に良い作品を作り上げるまでを目標としていきたいです。僕自身が携帯のアプリで将棋をやってみたらハマりまして、『電王戦』にも衝撃を受け、まさか今、こんな将棋ブームになるとは思ってもいませんでした。将棋を知らない人が観てもエンタテインメント作品として面白く、将棋ファンとしても恥じない作品を作りたいと思っています」と明かした。

また、準グランプリの荒木監督による「人数の町」は、ある男たちから「居場所を用意しよう」と持ちかけられた青年が、番号を与えられた生活を始めるも、個人としてではなく人数をまっとうする生き方に疑問を抱き、逃亡を図るSFファンタジー。河瀬審査委員長は「個人としてではなく人数の一部として人が存在するという独特の発想が面白い。現実感のあるSF設定に、時折、哲学的な様相が見え、奥深さを感じた」と寸評し、キノフィルムズも「奇妙な設定の中にも現代社会に対する皮肉がたっぷり込められており、他とは異彩を放つ作品。映像化した際にどのようなテイストになるのか監督の手腕にかかる作品」としている。

荒木監督は、2012年よりシナリオを本格的に学び、昨年、「テレビ朝日21世紀シナリオ大賞」優秀賞など数々の賞を受賞。リクルート・タウンワーク「バイトするならタウンワーク」などのCMやミュージックビデオの企画制作を行っている。応募作品で唯一のSF作品として受賞した荒木監督は「公募に河瀬監督の写真がドーンと出ているのを見て、世界で勝負しろ!ということかと思い応募しました。一人一人に名前があるのに人数として数えるとゾワゾワするものがあり、その怖さを描こうと思い、河瀬さんが受け止めてくれるなら、一番書きたい作品を出そうと思いました」と振り返った。

公式サイト http://www.kinofilms.jp/shinjin/

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