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「ブランカとギター弾き」の長谷井宏紀監督が金賞受賞!「新藤兼人賞2017」授賞式(2017.12.08)

日本映画の独立プロダクション52社によって組織される日本映画製作者協会が授与する「新藤兼人賞2017」の授賞式が12月8日(金)に行われ、フィリピンを舞台に孤児の少女ブランカと盲目の路上ギター弾きピーターの旅を描いた「ブランカとギター弾き」の長谷井宏紀監督が金賞、貫井徳郎の同名小説を映画化したミステリー「愚行録」の石川慶監督が銀賞、ドキュメンタリー作品「もうろうをいきる」「海の彼方」の山上徹二郎氏がプロデューサー賞を受賞。長谷井監督は渋滞に込まれ、会場に到着していないというハプニングの中、授賞式がスタートした。

今年で22回目を迎える「新藤兼人賞」は、日本映画製作者協会に所属するプロデューサーが「この監督と組んで仕事をしてみたい」、「今後この監督に映画を作らせてみたい」という観点で審査・評価し、その年、最も優れた新人監督(長編処女作より3作品まで)に授与する賞。現役プロデューサーのみが審査員を務める日本で唯一の新人監督賞だ。本年度は2016年12月から2017年11月までに公開された新人監督作品181本から選ばれた。

授賞式開催にあたり日本映画製作者協会の新藤次郎代表理事は「金賞の監督が遅刻しているということで、日本で仕事をするには困ったものです(笑)」と海外生活の長い長谷井監督を茶かしつつも、「『ブランカとギター弾き』はベネチア映画祭の支援を受けて製作され、製作国もイタリアなので、邦画という規約とはズレてしまっているのですが、銀賞の石川監督も海外で映画の勉強をされてきたということで、以前の新人監督デビューとは変わってきているように感じます。プロデューサー賞はシグロの代表として劇映画もドキュメンタリーも両方プロデュースする個性的な活動をされている山上さんに差し上げることで決定しました」と挨拶した。

なんとか表彰時間に間に合った長谷井監督は恐縮しながら登壇。審査委員長の進藤淳一氏の「邦画としてはどんな賞でも対象外になってしまうであろう作品ですが、独立映画のプロデューサーとして素敵な映画を作った新人監督に賞を与えたいという思いから、審査委員の意見が一致した」という話を受け、「胸が熱くなってしまいました。日本の方々から応援されているんだと、皆さんの愛を感じました。今はルーマニアで映画を作ろうとしているところですが、日本でも作っていきたいので、もしこの中に『一緒に仕事をしてやってもいい』という方がいましたら、声をかけていただければ。今後とも宜しくお願いいたします」と深々とお辞儀した。

銀賞を受賞した石川監督は「素晴らしいスタッフ、キャストと共に喜びを分かちあいたいです。私はアンジェイ・ワイダ監督を輩出したポーランド国立映画大学で学んだのですが、そこには戦後の35ミリフィルムを何万本も集めたフィルムアーカイブがありました。新藤兼人監督のフイルムは人気があり、擦り減ってしまっているほどで、日本人として誇りに感じ、映画は国境も時代も越えると改めて感じました。そんな監督の名前を冠した賞をいただくことができ『志しある映画を作っていいよ』と言われているようです。これからも精進していきます」と真摯に挨拶した。

また、プロデューサー賞を受賞した(株)シグロ代表の山上氏は、8月に公開した2本のドキュメンタリーで表彰され、「ドキュメンタリーはまだまだ沢山の方に観ていただける環境が整っていないですが、これをきっかけに観ていただければと思います。私は映画製作だけでなく、この10年ほどバリアフリー上映を推進しています。目や耳に障害がある人たちが観客とみなされてこなかった歴史を変えるためにも、お金はかかりますが、バリアフリーを映画の一つの未来の形としてスタンダードにしていければと思います。そして『もうろうをいきる』『海の彼方』の両監督にも受賞の喜びを報告したいと思います」と明かした。

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