「鈴木家の嘘」の野尻克己監督が金賞受賞!「新藤兼人賞2018」授賞式(2018.12.07)
日本映画の独立プロダクション50社によって組織される日本映画製作者協会が授与する「新藤兼人賞2018」の授賞式が12月7日(金)に行われ、家族の死とそこからの再生という重厚なテーマをハートウォーミングに仕立てた「鈴木家の嘘」の野尻克己監督が金賞、本谷有希子の同名小説を基にしたラブストーリー「生きてるだけで、愛。」の関根光才監督が銀賞、そして今年のサプライズ作品とも言える「カメラを止めるな!」の市橋浩治氏、上田慎一郎氏、豊島雅郎氏がプロデューサー賞を受賞した。
今年で23回目を迎える「新藤兼人賞」は、日本映画製作者協会に所属するプロデューサーが「この監督と組んで仕事をしてみたい」、「今後この監督に映画を作らせてみたい」という観点で審査・評価し、その年、最も優れた新人監督(長編処女作より3作品まで)に授与する賞で、現役プロデューサーのみが審査員を務める日本で唯一の新人監督賞。本年度は2017年12月から2018年11月までに公開された新人監督作品185本から選ばれた。また、本年度に限り、永年に亘る映画界への貢献と名誉を称えて特別賞を創設し、セントラル・アーツの社長であり数々の作品のプロデュースを手掛けてきた黒澤満氏に贈賞することとなっていたが、黒澤氏は11月30日に85歳で惜しまれつつ逝去した。
日本映画製作者協会の新藤次郎代表理事は「今年は特別賞を設け、黒澤満さんに受け取っていただくことを承諾いただいていましたが、御存知のように本日、告別式が行われており残念な思いです。昨日、お通夜でご子息の純さんにトロフィーを受け取っていただき、ご本人もこの賞を喜んで下さっていたというお話を聞けて良かったと思っています。黒澤さんは長いキャリアの中で沢山のプロデューサーを育てて下さり、ご冥福と共に感謝を申し上げます」と述べ、プロデューサー賞を受賞した「カメラを止めるな!」について「300万円の製作費で30億円を超えるヒットを記録したのは、今年の映画界にとって大きなトピックであり、作品の一人歩きを破格の規模で成し遂げた功績は大きい。正直、うらやましい・・・、大化けですよ!」と称えた。
「カメラを止めるな!」の上田慎一郎監督は「20代の頃から映画製作をはじめ、自分の貯金を切り崩して自主映画を作り、ひたすら信じた10年があるので、ぽっと出の新人とかシンデレラのように言われると、『そうではないよ!』と言いたい気持ちもあります。『カメ止め』は特に作品の成りたちやその後の展開も含めて評価いただけたのかなと思っています。僕は宣伝もエンタテインメントだと思っていて、作る人と届ける人の間に距離があると、上手くいかないことが多いような気がします。今回はスタッフ・キャスト60人が公開前のカウントダウンからはじめ、100日以上の舞台挨拶も行い、そういったことが成功に繋がったのかなと思います。また、何より観て下さった皆さんの応援が大きかったです」と感謝した。
金賞を受賞した野尻克己監督は「この作品で映画監督にしていただき、感謝しています。審査員の方々も映画を観て、賞を与えて下さり、深く感謝しています。新藤兼人監督の冠がついた賞なので、これから改めて映画監督としてのスタートが切れると思います。新藤監督は250本もの脚本を書かれ、100歳まで監督を続けていられた方なので、その背中を追いつつ、いつか追い抜かす目標ができました。100歳まで撮れるかはわかりませんが、引き続き作品を撮り続けていきたいと思いますので、応援を宜しくお願いいたします」と挨拶した。
また、銀賞を受賞した関根光才監督は「映像業界には10年程いますが、長編映画は初めてという若輩者でして、新藤監督の名を冠した賞いただけることはありがたく、光栄なことです。この映画は、躁鬱や困難を抱えて生きる若者の姿を描いており、共感できないという人も多いだろうと思っていましたが、いろいろな人から『深く共感した』との声をいただきビックリしました。閉塞感をぶち破る勇気や希望を感じ取っていただけて、僕も映画によって人生を変えられたという思いがあります。インディ映画のスピリットを継承させていただき、この賞に恥じない映画を作っていきたいです」と涙を浮かべながら挨拶した。