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「生涯映画プロデューサーでありたい」第32回藤本賞に「テルマエ・ロマエ」の稲葉直人氏(2013.06.06)

277本の映画を世に送り出した映画プロデューサー・藤本真澄の功績を讃え、その年に著しい活躍をした映画製作者を中心に表彰する第32回藤本賞の授賞式が6月6日(木)に行われた。本年度の藤本賞には「テルマエ・ロマエ」を製作したフジテレビの稲葉直人氏が選ばれ、特別賞には「かぞくのくに」を製作した河村光庸氏と「名探偵コナン」シリーズを製作した諏訪道彦氏、浅井認氏、石山桂一氏の3氏、奨励賞には「わが母の記」の監督の原田眞人氏、製作の石塚慶生氏、「桐島、部活やめるってよ」を製作した佐藤貴博氏が輝いた。

稲葉氏には「日本での実写映画化は不可能と思われてきた同名コミックを、イタリア・チネチッタ撮影所のオープンセットとCGを組み合わせる手法と、古代ローマ人を日本人俳優に演じさせる破天荒なアイデアで、これまでになかった全く新しいタイプのコメディを開拓し、多くの観客を集めた」その功績に対して藤本賞が授与された。

受賞スピーチの冒頭で「この受賞のご連絡を頂いた先々月、上司から『フジテレビの人間で過去、藤本賞を受賞したのは4人でそのうち3人は社長になっている。唯一社長になってないのは常務の亀山さんだから、稲葉、少なくとも常務にはなれるぞ!』と言われました。しかし、このたび亀山さんが社長になられたので、少なくとも社長というハードルが掲げられてしまいました」と苦笑いしながら話した。

「テルマエ・ロマエ」の製作に関しては「震災の3日後にクランクインという辛い時に、キャスト・スタッフが頑張ってくれて完成できました」と振り返り、「初めて企画から全て任せてもらった映画で、作っていく中でやっぱり自分はこの仕事しかないという覚悟が出来ていきました。生涯映画プロデューサーでありたいと思っています。まだまだ発展途上で未熟者のプロデューサーですが、この賞はもっと頑張れという激励の意味だと思います」と、受賞に対する謙虚な気持ちと映画製作への強い思いを口にした。

資金面や政治的局面に関する規制で、製作に困難を極めた「かぞくのくに」を製作した河村氏は「こんなテーマですからお金が全く集まらなくて、脚本も数え切れない位、練り直しました。この映画はキャスト・スタッフの魂がこもっています」と語り、「今回このような賞を頂いて、寺山修二の『振り向くな振り向くな、後ろには夢がない』という言葉を思い出しました。今日、夢をもう一度持つ事ができました」と喜びを語った。

「わが母の記」を製作した石塚氏は「当初、主演は引退された別の女優さんにお願いしていたんですが断られまして。その後、樹木希林さんにお願いをした際『こんな日数のかかる面倒くさい仕事は嫌だ』とまたも断られてしまい、1ヶ月程この役は誰がいいのか路頭に迷っていました。そんな時、樹木さんから電話で『監督と3人でご飯にでも行きましょう、役は断るけどね』と誘われたんです。そして一時間後、樹木さんの出演が決まった時、僕たちはこの映画を作らねばならない!と強く思いました」と、主演女優が決まらなかった苦労話を披露。同じ苦悩を共有した同賞受賞の原田眞人監督も、石塚氏のスピーチに喜びの笑みがこぼれていた。

公開情報 公式サイト:http://www.eibunkyo.jp/fujimoto.html

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