高畑勲監督推薦の瀧本美織がヒロインに!宮崎駿監督最新作「風立ちぬ」中間報告会見(2013.06.06)
「崖の上のポニョ」以来5年ぶりとなる宮崎駿監督作「風立ちぬ」の中間報告会見が6月6日(木)に行われ、スタジオジブリの鈴木敏夫プロデューサーとヒロイン里見菜穂子の声を演じる瀧本美織が登壇。6月8日(土)から劇場のみで上映される4分間の予告編映像も初披露され、鈴木プロデューサーは「今は音の作業中で、宮崎たっての希望で全部モノでやっているのが大きな特徴。戦闘機の音も人間の声でやってみようというのが新しい試み。順調に行けば6月17日には0号が完成しますが、僕としては寂しい気持ちで、もっと長く作っていたい」と挨拶した。
今年は、スタジオジブリにとって宮崎駿監督の本作と高畑勲監督の「かぐや姫の物語」の長編2本が公開されるという記念すべき年。「風立ちぬ」は、零戦を設計した堀越二郎の生涯に、堀辰雄の小説「風立ちぬ」のラブストーリーを加えた意欲作となっている。既に発表されているとおり、主人公・堀越二郎の声をアニメ「エヴァンゲリオン」シリーズの庵野秀明監督が務めている。
鈴木プロデューサー進行の下で会見は進み、瀧本を紹介しつつ「何で美織ちゃんに決まったの?」と先制パンチをくらわしながらも「宮さんはヒロインの声に、もの凄いこだわる人。今回は“ある方”というか、『かぐや姫の物語』を製作中の高畑監督の推薦があってね」と明かし、瀧本も「え~、初耳です」と驚きの様子。「宮さんの先輩が高畑勲だから、彼から『彼女は何よりも演技が素晴らしい』と推薦されたら、宮崎も『パク(高畑)さんの言うことなら間違いない!』と。その場で決まってたんですよ」と明かした。
その後、オーディションも行われ、宮崎監督は「思い描いていた声質と違う」とやや難色を示していたようだが、鈴木プロデューサーは「あの芝居があれば上手くいくよ」と太鼓判を押したそうで、「本番の時に声質が変わってたんですよ。宮さんも理想とする声で、すんごい喜んじゃってね」と語り、瀧本も「本番はオールOKということですね!良かったー。菜穂子さんの絵を見たからですかね?」と安堵した様子。「宮さんの要求としては、戦時中の本当のお嬢様。品が欲しかった。今日はいつもと比べてキレイだね。ヒロインをイメージしてきたの?」と聞かれると、瀧本は「ジブリと『風立ちぬ』をイメージしたら、ハイジっぽくなっちゃいました」と照れていた。
また、関東大震災が描かれていることについて、東日本大震災後の日本を励ますような意図があったのか?と質問されると鈴木プロデューサーは「2010年8月にこの企画が立ち上がったんですが、主人公2人の出会いを劇的にするために震災が出てきて、そのシーンまでの絵コンテを描き終えたのがちょうど2011年3月10日だったんですよね。『コクリコ坂』でバタバタしていた時期で、宮さんもさすがに今のままやっていていいのか?と悩んでいたんですが、僕としては歴史上の事実なので手を加えるのは違うと。時代が映画を作るし、映画が時代を作る。でもそのことにとらわれるのはおかしいし、作品がブレてはいけないと思ったんですよ」と明かした。
そして本作の製作経緯について「宮崎は昭和16年生まれで、子供の時に日本がアメリカに戦争で負けちゃって、悔しかったみたいなんだよね。でも戦闘機が大好きで絵を描いたりして、大人になると戦争が大嫌いで反戦デモに出たりなんかして、何でこんな自分が出来てしまったのかを明らかにしようとしたんじゃないかな」と語り、「宮さんも72歳で、普通だったらアニメーション映画を作るのは大変な年齢。『これは宮さんの遺言ですかね』と聞いたら『かもしれない』と言っていた。個人的には宮さんの考えが出ている映画だなと。空に憧れ、飛行機に憧れ、それが転じて戦闘機を作るようになった青年が、どんな思いで作っていたのか?仕事とは何なのか?を問いかけているようで、どんな仕事でも“良い”と思える瞬間があると感じさせてくれる。劇中で二郎を励ますカプローニ(イタリアの飛行機製作者)が何度も繰り返すのが『力を尽くして生きなさい』という言葉。これは旧約聖書の伝導の書の一節に感化されたものだと思うのだけど、目の前のことに力を尽くそうという気持ちを後世の人に残したいのかなと思った」と神妙な面持ちで語った。
この日はヒロインの瀧本の他、西島秀俊、西村雅彦、風間杜夫、竹下景子、志田未来、國村隼、大竹しのぶ、野村萬斎ら豪華声優陣も発表され、元スタジオジブリ取締役のスティーブン・アルパート氏も初声優として参加している。
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公開情報 | 東宝配給「風立ちぬ」は2013年7月20日(土)から全国公開 公式サイト:http://kazetachinu.jp/ |
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