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テオ・アンゲロプロス監督遺作「エレニの帰郷」来日記者会見(2013.10.22)

昨年、映画撮影中に交通事故で急逝したテオ・アンゲロプロス監督の遺作となった、2008年製作の「エレニの帰郷」が公開されることになり、監督夫人でプロデューサーであるフィービー・エコノモプロス、監督令嬢でプロダクション・コーディネーターのアンナ・アンゲロプロスが来日し、アンゲロプロス監督全作品の字幕を担当した作家の池澤夏樹氏とともに記者会見を10月22日(火)に行った。フィービー夫人は「日本にまた、戻って来られて嬉しい。主人の魂もこの会見の場にいる気がする」と挨拶した。

本作は2005年に公開された「エレニの旅」に続いて、アンゲロプロス監督が20世紀を主題とした3部作の2作目となり、苦難の時代を生きたエレニという女性、彼女を愛し続けた男ヤコブとエレニが思い続けたスピロスの愛の叙事詩が、エレニの息子で映画監督の“A”の目線を通じて語られていく。第3部の完結篇の撮影途中、監督が急逝したため、20世紀3部作は未完のままとなった。

最後に来日したのは21年前だという令嬢のアンナは「まだ子どもでしたが、父と一緒に日本にいた時のことをよく覚えています。戻って来られて嬉しい。『エレニの帰郷』が日本で受け入れられ、大成功をすることを祈っています。この作品は希望的な未来というものがテーマで、主人公の女性エレニの姿を通して21世紀に向けた希望を描いています。これから、若い新たな世代が新しい時代と共により良い世界を作っていくこと、若い世代の人たちにこの作品をはじめとする映画が受け継がれ、楽しんでもらえることを願っています」と挨拶した。

フィービー夫人も「テオの映画は考えて見るものでなく、魂で見る映画だと思っています。魂で感じて楽しんでいただきたい」とアピール。アンゲロプロス監督は大の日本好きだったということで、日本のどういうところが好きだったのか?の質問に「日本映画は大好きでした。特に小津安二郎の作品が好きで、一緒に字幕なしで小津作品をたくさん見ました。家族をテーマに描いていることが自身の作品に近く、共感していたのだと思います。日本の観客についても、他の国と違い、いちいち説明しなくても直感でありのままに受け取り、理解してくれ、説明しなくても解ってくれたのは世界で唯一、日本の観客だった。素晴らしかった。と語っていました」と明かした。

アンゲロプロス監督の全13作品の日本語字幕を担当した池澤氏は「字幕担当というだけで、この場に出てくるのは僭越ですが、『旅芸人の記録』から全てやって、しかも字幕もテオ以外はやったことがなく、完全な専属関係の不思議な字幕担当者ということで出て参りました。字幕担当者は丁寧にワンカットずつ映画を見ることから始め、多分日本で一番たくさん回数を見ているので、それなりに少しは理解していると思います」とコメント。

アンゲロプロス監督のいちファンとして、本作の公開に漕ぎ着けた東映の岡田裕介代表取締役社長は「前からファンで、是非とも公開したいと思っていました。娯楽の東映から芸術の東映に変貌してから公開したいと思っていましたが。難しい映画ですが泣ける作品です。来年1月25日、命日に合わせて翌日に公開します。ご遺族の方と手に手をとってやっていきたい」と気合が入っている様子。今後はアンゲロプロス監督の5作品を新宿バルト9で公開し、「エレニの帰郷」はラストを飾る。

公開情報 東映配給「エレニの帰郷」は2014年1月25日(土)新宿バルト9他全国公開
公式サイト:http://www.eleni.jp/

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