高畑勲監督「出来上がった映像に大変満足!」と自ら太鼓判「かぐや姫の物語」完成報告会見(2013.11.07)
7月に公開され、興収118億円を突破した宮崎駿監督作「風立ちぬ」に続き、日本のアニメーションの礎を築いた高畑勲監督14年ぶりの最新作「かぐや姫の物語」が遂に完成し、報告会見が11月7日(木)に行われた。高畑監督をはじめ、主人公のかぐや姫を演じた朝倉あき、幼馴染の捨丸役を演じた高良健吾、育ての母・媼役の宮本信子らが登壇。高畑監督は「長い時間とお金をかけてやっと完成できたのも、ここにいらっしゃる方々と優秀なスタッフが力を合わせてやってきたお陰。こんなに心から感謝したことは無く、あとはどうお金を回収するかということらしいです。一人でも多くの方に観ていただきたい」と挨拶した。
1988年の「火垂るの墓」「となりのトトロ」同時公開から25年目の今年は、高畑勲監督、宮崎駿監督の作品が同年公開される奇跡の“ジブリイヤー”と呼べる年。製作期間8年、製作費50億円を費やした娯楽大作である本作は、誰もが知る「竹取物語」の筋書きはそのままに、誰も知ることのなかった“かぐや姫の心”を描くことで、日本最古の物語に隠されたかぐや姫の真実を描き出している。
元日本テレビ会長の故・氏家齊一郎氏から高畑監督が懇願されて製作がスタートした作品ということで、氏家氏亡き後、その名代として本作に関わってきた大久保好男 日本テレビ社長は「スタジオジブリの製作現場を見させていただき、一枚、一枚、素晴らしい絵が丁寧に描かれていて感動しました。名代ではありますが、心を込めて物心両面で応援させていただいています。あまりに丁寧な作業で、これは時間が掛かるだろうと心配もしましたが、完成報告でき感無量です。78歳を迎えた高畑監督の大いなる挑戦に本当に心から拍手したい。一人でも多くの方に観ていただき、本作の良さを知っていただきたい」と力を込めた。
製作にあたり、こだわってきた点を聞かれた高畑監督は「僕は絵は描かないので、まず、どういう絵と表現でやるかということに関心を持ってきました。新しいだけでなく、意味があってやっていることが達成できたのは、ずうずうしく言うと、これからのアニメーションにとっても、一歩進めたような気がします。出来上がった映像には大変満足を覚えましたし、本当に嬉しかったです」と製作スタッフに向けて再び感謝した。
かぐや姫を演じた朝倉あきは「高貴で手の届かない、この世にはいないかのような美女を、どうしたら表現できるのか悩みましたが、伸び伸びと生を楽しむ女の子に出会って、思うようにやろうと思えました。映画を観て、涙があふれました。高畑さんはじめ、沢山の方の心尽くしと大変な思いがあったと思います」と感動の様子。高良健吾も「僕は空が好きで、スカイダイビングも好きなんですが、子供の頃から大好きなジブリの作品には空のシーンが多いので影響されているのだと思います。捨丸役として空を飛べて、しかもジブリの作品で嬉しいです。今日の朝、観て来たばかりで、まだ興奮が止まりません!」と明かした。
声優は初挑戦だったという宮本信子は「日本が誇るアニメの古典となると思いました。浮世絵の人物が浮き上がって、動き出したような感覚で、その筆使いや色彩などは日本人にしか表現出来ないもの。世界に羽ばたいて、月までいって欲しい」とエールを贈り、本作が遺作となった夫婦役の地井武男については「若い頃からよく知っていて『お互い変わらないね』と肩を叩きあって、同窓生のように楽しく仕事が出来ました。これが最後だったんですよね。今は月で見守っているんじゃないでしょうか」と思いを馳せた。
かぐや姫へ求婚する大伴大納言を演じた宇崎竜童は「プレスコということで、向かいにおられた高畑監督を竜に見立てたんですが非常に苦労しました。2年経って、セリフを足すからと呼ばれて、今度はちゃんと絵が完成していたのですが、大納言の顔が私にそっくりで。僕と伊集院光はこのままの顔を絵になさったんじゃないかと(笑)。映画で流れる子守唄に感銘を受け、監督がお作りになったということで負けたなと。二階堂さんの歌も久石さんの音楽も素晴らしく、音楽家としてではなく声優で呼ばれてしまい、訳が分からない内に終わりましたが、それでも素晴らしい映画でした」と音楽家としての血が騒いだ様子。
高畑監督と共に脚本を手掛けた坂口理子は「私が関わったのは僅か3ヶ月でして、知識の詰まった監督と充実した時間が過ごせましたが、突然監督から終わりを告げられ、凄く寂しくなりました。周りのスタッフからも『えっ!出来たんですか?』と驚かれて。文字だけだったものから、これほど世界が広がって、素晴らしいことだと思います」と感慨深げ。主題歌「いのちの記憶」を歌うシンガーであり僧侶でもある二階堂和美は「監督からハッピーエンドでは無いので、映画を観た方々の気持ちを慰めるような歌をお願いしますと仰せつかりました。私は物事の終わりを常日頃から考えていたので、おこがましいですが『よくぞ任せて下さった!』と思いました」と笑顔で語った。
また、宮崎駿監督が引退宣言をして最初のジブリ作品ということについて高畑監督は「何の意味も無いです。居なくなった訳じゃないので、何も変わってない」と淡々と語り、宮崎監督も既に本作を「観ていると思う」と明かしながらも、感想は聞いていないそう。引退宣言についても「本人がケジメをつけたかったということで、『今回は本気です』とか言っていたようですけど、(また映画を作る)可能性はある。そういうことがあっても驚かないで欲しい」と盟友をフォローし、次回作については「全然考えて無いです」と、まずは「かぐや姫の物語」が完成した充足感に浸っているようだった。
公開情報 | 東宝配給「かぐや姫の物語」は2013年11月23日(土)から全国公開 公式サイト:http://kaguyahime-monogatari.jp/ |
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