役所広司&岡田准一、裸の付き合いで師弟関係が築けた!「蜩ノ記」完成報告会見(2014.08.12)
黒澤明監督の愛弟子として、これまで「雨あがる」、「博士の愛した数式」など人間の内面を丁寧に描き続けてきた小泉堯史監督が、役所広司、岡田准一、堀北真希、原田美枝子らを迎え、夫婦の愛、家族の愛、初めての恋、そして師弟の愛を描いた「蜩ノ記」の完成報告会見が8月12日(火)に行われた。現在公開中の「渇き。」で演じた父親とは正反対の役柄とも言える、家族への愛に溢れ、信義を貫く気高い武士・戸田秋谷を演じた役所は「秋谷という役に今こうやって出会えて、年を取ってきて良かったと感じ、幸せな気持ちでいっぱいです」と挨拶した。
原作は、作家の浅田次郎氏に「これまでにない完成度」と選評され第146回直木賞を受賞し、時代小説としては異例の発行部数60万部を誇る葉室麟の同名小説。ある罪で10年後の夏に切腹すること、そしてその日までに藩の歴史である「家譜」を完成させることを命じられた戸田秋谷。切腹の日まであと3年に迫ったある日、秋谷が逃亡せぬよう監視役として檀野庄三郎が秋谷の家族と共に暮らし始める。庄三郎は秋谷の揺ぎない姿、それを支える家族の姿に感銘を受け、秋谷が切腹に追い込まれた事件に疑問を抱き、真相を探り始める。
原作に惚れ込み、自ら葉室氏に映画化のオファーに行ったという小泉監督は「葉室さんのファンに上手く伝わり、受け入れられたら嬉しい」と語り、葉室氏も「私にとって初の映画化作品を、丁寧に心を込めて作っていただき、すごく幸せ。尊敬する黒澤監督のDNAを受け継いでいる小泉監督と、黒澤組のスタッフが撮るということで、天にも昇る気持ちでした。私が『柚子は九年で花が咲く』という諺が好きなのを知ってか、撮影現場に柚子の木を植えて下さり、堀北さんの台詞としてその言葉を聞いた時には、ウルウルしてしまいました。日本と日本人の美しさが伝わってくる映画で、多くの方に届けられたら」と語った。
秋谷の監視役として戸田家に入るものの、秋谷の人間性に惹かれ成長していく庄三郎を演じた岡田は「この作品を経験した前と後では、役者人生として大きな違いがあると感じています。小泉さんの下で侍を演じられたのも嬉しいし、日本の原風景が詰まった原作を、どう表現するのか楽しみにしながら演じました」と感慨深げに明かし、師弟関係を演じた役所については「憧れの俳優さんで、現場でもナチュラルで素敵だなと横目で見ていました(笑)。どうやって芝居に取り組まれているか伺うと、『やぶれかぶれで、なるようになるよ』と言われ、僕はガッチガチで現場に入っていたので、反省しました」と目から鱗だった様子。
そんな岡田の言葉を受け、役所も「テレビで歌ったり、踊ったりしている姿を見ていましたが、最近の若者にはない硬質なものを感じました。常に刀を持って稽古していたし、夜も宿の裏道をダッシュしたり、刀を振ったりしていて、ストイックに努力する姿に頭が下がる思いでした。もちろんお芝居も素晴らしいんですよ!」と絶賛。また、撮影が早く終わると男同士の交流を深めていたようで、「一緒に風呂に入って、この筋肉を鍛えるのにはどうすればいいの?とか聞いていました」と笑って明かした。
庄三郎に心惹かれていく秋谷の娘・薫を演じた堀北は「毎日を丁寧に、大事に生きている人たちの姿が描かれていて、撮影現場でも一つ一つ丁寧に演じられるよう心掛けました。芯の強い女性を表現するのは難しいのですが、小泉監督とお仕事できるということで、頑張りました」と明かし、秋谷に深い愛情で尽くす妻・織江を演じた原田は「小泉監督とは『雨あがる』以来ですが、監督やスタッフが信頼してこの役を下さったことを嬉しく思います。フィルムで撮るのもこれが最後になるんじゃないかと思うので、フィルムの良さを味わうこともできた現場でした」と語った。
また、準備に十分時間をかけるなど黒澤イズムとも言うべき手法を受け継ぐ小泉監督だが、自身は特に気負い無く臨んでいるようで、「力のあるキャストが参加してくれて、とにかく毎日の撮影が楽しかった。ワンテイクで撮るのは、現場のスタッフもこれまでやってきた方法なので意図しているわけではなく、エキスパートに囲まれ、安心感がある現場でした」とコメント。しかし岡田はそんな現場にかなり緊張していたようで、「光が肩のこのラインにきたら撮影を始めます。ミスったらまた明日と言われて・・・。監督からは『ゆっくり、大きくです。岡田さん!』とだけ言われていました」と巨匠の演出にタジタジだったようだ。
公開情報 | 東宝配給「蜩ノ記」は2014年10月4日(土)全国公開 公式サイト:http://www.higurashinoki.jp/ |
---|