ニュース

吉永と二宮は互いのファンに睨まれないのが目標!?山田洋次監督新作「母と暮せば」製作発表会見(2014.12.18)

数々の“家族”の姿を描いてきた山田洋次監督が、故・井上ひさしの遺志を引き継ぎ、戦後の長崎を舞台にした新作「母と暮せば」の製作発表会見が12月17日(水)に行われ、この日、初めて明らかとなったキャスト陣の吉永小百合、二宮和也、黒木華と共に登壇した。山田監督は「50年という年月で沢山の映画を作ってきましたけれども、この年になってこういう企画に出会える不思議というか、運命を感じています。生涯で一番大事な作品を作ろうという気持ちですし、必ずやいいものに仕上げなきゃ、井上さん、長崎の人々に申し訳ない」と並々ならぬ意気込みを明かした。

ヒロシマをテーマにした戯曲「父と暮せば」の他に、ナガサキと沖縄をテーマにした「戦後命の三部作」ともいうべき3作品を作りあげることを晩年の課題としていた井上ひさし。沖縄については井上が残した構想と資料を基に蓬莱竜太が劇化した「木の上の軍隊」があり、残るナガサキについては「母と暮せば」というタイトルだけが決まっていたということで、井上が果たせなかった遺志を山田監督が引き継ぐ形で映画化が決まった。

物語は、1948年8月9日、長崎で助産婦をして暮らす伸子の前に、3年前に原爆で亡くしたはずの息子・浩二がひょっこり現れることから始まるファンタジー。2015年の春にクランクインし、秋に完成予定。制作・配給を行う松竹の120周年記念映画として、松竹とも縁の深い小津安二郎監督の誕生日であり命日でもある12月12日に公開される。

「母べえ」「おとうと」に続き山田監督作品の主演を務める吉永は「また、山田学校に帰って来られて、とてもとても嬉しく思っています。二宮さんのファンからは睨まれてしまうかもしれませんが、素敵な親子になりたいと思います」と挨拶。これに対し息子役の二宮は「すごく緊張しています」と2回繰り返し、「ずっと見てきた映画の中にいる人たちが目の前に飛び出てきたようです。全国の吉永さんファンに睨まれないように、私も気をつけたいと思います」と言って笑いを誘った。

亡くなった浩二と結婚の約束をしていた恋人・町子役を演じる黒木は「私こそ二宮さんの恋人で本当に大丈夫だろうかと不安です。山田監督は素敵な親子を沢山撮られていますし、『小さいおうち』の時も大きな経験を沢山させていただいたので、また呼んでいただけて光栄です。こんなに素敵な役者さんと山田組でご一緒でき、幸せ者だなと感じています」とはにかんだ。

今回描く母子像について山田監督は「仲のいい親子です。母にとってはかわいい息子。息子は冗談好きで、いつも笑わせたり、いたずらして困らせたりする甘えん坊。でも母は息子を失って、生きていく気持ちが無くなっていたところに息子が現れるんです」と明かした。山田監督の前2作では女の子の母親を演じていた吉永は「初めて男の子のお母さん役ということで、どんなお母さんになろうかとワクワクしています」と期待を覗かせ、山田監督も「ちょっと恋人みたいなんですよね。母にとって息子は」とアドバイスした。

また、来年で終戦から70年を迎えることについて吉永は「戦後何年という言い方がずっと続いて欲しい。70年目にこういう映画に出演できるのは意義のあることだと思います」と力強く語り、文字や教科書などでしか戦争を知らないという二宮も「僕自身、そして下の世代、応援して下さる人たちが、この作品に触れることで、戦争を風化させないようにするのが使命だと思います」と明かした。

最後に山田監督は「長崎って漢字で書く場合とカタカナ、ローマ字で書くのとは全然意味が違う。ヒロシマ、ナガサキと書かれると、人類の歴史に留めなければならない地名や、世界中の人が知らなければならない地名になる。そういう場所を舞台にするんだという思いでいます」と作品への思いを吐露した。

公開情報 松竹配給「母と暮せば」は2015年12月12日(土)全国公開
公式サイト:http://hahatokuraseba.jp/

バックナンバー

ページのトップへ