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窪塚洋介が「踏絵マスター」を自称!「沈黙−サイレンス−」日本外国特派員協会会見(2017.01.13)

マーティン・スコセッシ監督が戦後日本文学の金字塔とされる遠藤周作の「沈黙」を完全映画化した「沈黙−サイレンス−」の日本人キャストである窪塚洋介、浅野忠信、イッセー尾形が1月12日(木)、日本外国特派員協会での記者会見に登壇した。外国人記者たちも大勢集まる会場ということで、浅野は「英語は上手くないのに通訳の役を演じていました」と英語で笑いを取り、窪塚も「アイ・アム・ア・踏絵マスター、キチジロー!」と自己紹介。そしてイッセーは「アメリカでもインタビューを受けましたが、日によって言うことが違うので、今日、話すことは1月12日現在のイッセー尾形の言葉とご承知置きいただければ」と牽制した。

江戸初期、幕府による激しいキリシタン弾圧下の長崎で捕えられ、棄教したとされる高名な宣教師フェレイラを追い、長崎に潜入した若き司祭ロドリゴは想像を絶する弾圧の現状を目撃するのだった。次々と犠牲になる人々を前に、守るべきは大いなる信念か、目の前の弱々しい命か、決断を迫られる。「アメイジング・スパイダーマン」シリーズなどのアンドリュー・ガーフィールドがロドリゴを演じ、リーアム・ニーソン、アダム・ドライバーらに加え、日本からは塚本晋也、小松菜奈、加瀬亮、笈田ヨシらも参加している。

演じた役柄について浅野は「元々はクリスチャンだったのが、神が信じられなくなり、通訳になった人間で、単純な悪役であったり、わかりやすい人間ではないと思いました。井上筑後守とロドリゴの間にいる男です」と語った。強烈なしゃべり方でキリシタン弾圧を推し進める井上を演じたイッセーは、外国人記者から「声が全然違う!」と驚かれながらも「キリスト信仰が天空であるとすれば、井上は地上にしがみついている男。そう感じて、ああいう声も出てきたのでしょう」と冷静に分析した。

何度も踏絵に応じてしまい、ロドリゴも裏切るキチジローを演じた窪塚は「ずるくて、汚くて、弱い人間なんですが、あまりに踏絵を踏むので、弱いのか、強いのか、わからなくなりました。僕自身とキチジローを繋ぐのはイノセントさだと思ったのですが、アメリカでのプレミアで字幕の無い映像を初めて観て、もっとエモーショナルに、もっとピュアに演じていたはずのカットが、よりバカで汚らしく、弱くて惨めに見えるように全部編集されていました。結局、キチジローはキリスト教を理解していない、自分の中にあるものだけ信じて生きている人間なのだと感じることができました」と明かした。

また、見どころについて聞かれた窪塚は「神が沈黙しているところ。自分自身の心に入っていって、その答えを見つけなければならないのが、この作品の大切なところ」と語り、イッセーも「もし答えられる人がいるなら答えていただきたいが、『神は沈黙した。じゃあ、いつ喋ってた?』と伺いたい。万力で絞り出されるような過酷な状況にいて、人間と言えるのか?観終わって清らかなものが心に残っているし、これは一生続くと思う」と明かした。そして、アカデミー賞最有力候補と謳われていることについて浅野は「選ばれると思っていますし、そうならないとすれば、神様が審査員に余計なことを喋ってるんじゃないかと思う」とジョークを飛ばした。

日本ではなく台湾での撮影は違和感があったか?と質問されると、浅野は「できれば日本で撮影したかったですが、台湾は素晴らしい国だし、ご飯も美味しいし、素晴らしいスタッフが集まってくれました。江戸時代という違う世界にいるという意味では、やり易かったですが、日本で撮っていたら、もっと違うものになっていたかもしれない」とコメント。窪塚は「京都の時代劇のマスターたちが集結していたので、ドアが引き戸になっていないことをスコセッシ監督に指摘すると、日本の史実に合うように全て変更して下さった。だから違和感もなかったんだと思う」と明かした。

30年近く「沈黙」の映画化を望んできたスコセッシ監督の演出についてイッセーは「まずどう演じるかを見てくれて、否定的な言葉が一切無い。俳優はそういう場を与えられると感性が研ぎ澄まされる。相手役のアンドリューが醸し出すものがキャッチできたし、鋼のようだった彼が棄教して空っぽになった姿を見て、何てことをしたのだろうと罪悪を感じ、触れてみたいと歩み寄っていったのは、自分でも予想していないシーンになった」と語り、窪塚は「監督は王様みただけど、その場に居てくれるだけで演技がし易くなる人。自分たちが大きく、素晴らしい役者になったような気持ちにさせてくれる人」と絶賛。

だが一方で「監督から『ニューヨークに来たら、家においでよ!』と2回も言っていただいたので、ちょうど行った時にマネージャーに連絡してみたら、スルーされました(笑)」と苦い体験を自ら暴露。王様とプライベートでお近づきになるのは難しかったようだ。

公開情報 KADOKAWA配給「沈黙−サイレンス−」は2017年1月21日(土)全国公開
公式サイト:http://chinmoku.jp/

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