原恵一監督は“怒り”を原動力に作品を作っていた?!「第30回東京国際映画祭」ラインナップ発表会(2017.09.26)
10月25日(水)から11月3日(金・祝)まで開催される「第30回東京国際映画祭」のラインナップ発表会が9月26日(火)に行われた。コンペティション部門15作品をはじめ全上映作品が発表され、オープニング作品は山田涼介主演「鋼の錬金術師」、オープニングスペシャルはチェン・カイコー監督による日中合作「空海―KU-KAI―」、クロージング作品は元米国副大統領アル・ゴア氏が出演する「不都合な真実2:放置された地球」に決定。ゲストとしてコンペティション部門に選出された「最低。」から瀬々敬久監督、出演の森口彩乃、佐々木心音、山田愛奈、「勝手にふるえてろ」から大九明子監督、アニメーション特集「映画監督 原恵一の世界」から原恵一監督も登壇した。
本年度からフェスティバル・ディレクターを務める久松猛朗氏は「30年という記念すべき節目の年に、過去の上映作品を振り返りながら、これから進むべき道をどうしていくかというビジョンとして、Expansive(映画を観る喜びの共有)、Empowering(映画人たちの交流の促進)、Enlightening(映画の未来の開拓)というキーワードを掲げさせていただきました。全作品の中から若手俳優を見出す“東京ジェムストーン賞”も新設し、トロフィーも新たに江戸切子のカットを施したものを作成中です。各プログラムもバランスの取れた充実した作品群となっておりますので、多くの映画ファンに届けるべく、これまで以上のご支援を賜りますよう宜しくお願いいたします」と挨拶した。
コンペティション部門の矢田部吉彦プログラミング・ディレクターは今年の特徴として、「これまで社会問題に目を向ける作品が多かったのですが、個人の問題や心の内に切り込む作品が多くなっているような気がします。タイトルを付けるとすれば“女の生き様、男の生き様”です。ワールドプレミア作品も8本ありますので、ご注目いただきたいと思います」とコメント。コンペティション15作品を審査するのは、トミー・リー・ジョーンズ氏(俳優/監督)、マルタン・プロヴォ氏(監督)、レザ・ミルキャリミ氏(監督/脚本家/プロデューサー)、ヴィッキー・チャオ氏(女優/監督)、永瀬正敏氏(俳優)に決定。
AV女優・紗倉まなによる短編連作小説を映画化した「最低。」の瀬々監督は「原作もAV業界についてというより、AV女優の友人や家族との関係、その日常を描いていたので、そういった部分を描いてみようと思いました」と明かし、AV業界に足を踏み入れてしまう主婦を演じた森口も「覚悟がいる作品だとは思っていましたが、いざ撮影となって『何で引き受けちゃったんだろう?』と思いました」と笑った。撮影時には、佐々木がプールに落ちて脳震とうを起こすというハプニングもあったそうで、瀬々監督は「映画のシーンが現実になってしまって、本当にすみませんでした!」と佐々木に謝罪する場面も。
また、綿矢りさの同名小説を松岡茉優主演で映画化した「勝手にふるえてろ」の大九監督は「プロデューサーから原作を渡され、タイトルを見て『絶対やる!』と即思った作品です。松岡さんは内向的で独特な雰囲気の少女としてリアルなヨシカを演じてくれました。誰かにとって大切な映画になればと思っていつも作っていますが、東京国際映画祭という世界の方にご覧いただける、世界の監督と競うことができる場に参加でき、嬉しく思っています」と語り、松岡からは「全国のこじらせ女子や、背中を押して欲しい女の子たちをツンツンと押せたらと思って作りました」とビデオメッセージが届いた。
そして、監督デビュー30周年を迎えた原恵一監督は、次回作のヒントとなるネコのTシャツを着て登場し、「映画祭という場で過去作品を観ていただけるということで、非常に嬉しく思っています。『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲』はターニングポイントになった作品でもあるので、海外の方々にもどういう形で受け止めてもらえるか楽しみ」と明かし、「クレヨンしんちゃん」シリーズで最も泣けるとの呼び声が高い「〜嵐を呼ぶ アッパレ!戦国大合戦」については、登場人物が死んでしまう展開ということもあり、「子供たちが見るからと最初は反対されて、テレビ局とかの偉い人たちと揉めましたが、最終的に原作の臼井さんがOKを出して下さいました」というエピソードを披露。
唯一、実写作品として手掛けた「はじまりのみち」については、「脚本を書いていたら、監督もしたくなっちゃって。世界で一番好きな監督であり、影響を受けた木下惠介監督の作品を観られる機会が少なくなっている中で、もっと若い世代に『こんな凄い監督がいたんだ!観とけよ!おまえら!』と怒りに満ちて作りました」とユーモアを交えて明かし、「百日紅〜Miss HOKUSAI〜」でアニメーションに戻ったことについては、「実写はスピードが速いので、またアニメの絵コンテを1コマずつ描くのは面倒臭いなとは思ったんですが、これも原作の杉浦日向子さんという凄い作家がいたことを知って欲しくて、怒りを持って作りました」と明かした。
開催情報 | 2017年10月25日(水)〜11月3日(金・祝)、六本木ヒルズ、EXシアター六本木他都内の各劇場及び施設・ホールで開催 公式サイト:http://www.tiff-jp.net |
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