吉田羊が大ファンのイ・チャンドン監督を前に戦々恐々!「バーニング 劇場版」来日記者会見(2018.12.12)
村上春樹が1983年に発表した短編小説「納屋を焼く」の設定はそのままに、物語を大胆に脚色した「バーニング 劇場版」のイ・チャンドン監督が来日し、12月12日(水)に記者会見を行った。「ポエトリー アグネスの詩」以来8年ぶりに手掛けた本作は、今年のカンヌ国際映画祭で批評家による得点が過去最高点をマークし、国際映画批評家連盟賞を受賞。これについて監督は「専門家の方々に評価していただけたことは嬉しいが、日本の観客の方々にどう受け止めていただけるか気になる。楽しんで観ていただけたらと思っています」と挨拶。また、イ・チャンドン監督作品のファンという女優の吉田羊も花束を持って駆け付けた。
小説家を目指しながらバイトで生計を立てるジョンスは、幼馴染のヘミに旅行中の猫の世話を頼まれる。旅から戻ったヘミは、アフリカで出会ったという謎の男ベンをジョンスに紹介。「僕は時々、ビニールハウスを燃やしています」と秘めた“趣味”を明かすベンに、ジョンスは恐ろしい予感を感じずにはいられなかった。そして、突然ヘミが姿を消し、ジョンスは必死に彼女を探そうとする。主人公ジョンスを「ワンドゥギ」や「ベテラン」のユ・アイン、ヒロインのヘミを長編映画デビューとなるチョン・ジョンソ、正体不明のベンを「ウォーキング・デッド」シリーズで知られるスティーブン・ユァンが演じる。
監督は意図的に作品を作りあげたとし、その理由について「最近の映画はどんどんシンプルで観やすいものになっていると思う。観客は決まったストーリー展開に慣れ、そういう作品を望む傾向にあるので、作り手も自然とそういう作品を作ろうとする。その流れに逆行したいと思い、映画を通して『人生とは何か?世界とは何か?』を考えて欲しいと思いました。日本の皆さんにも、この作品から新しい経験をして、世界のミステリーを感じて欲しいと思っています」と明かした。
NHKから「村上春樹の短編を映像化して欲しい」という依頼を受けたのが本作のきっかけだそうで、「最初は難しいと感じ、プロデューサーとして参加して若手の監督にチャンスを与えようと思ったのですが、上手くいきませんでした。脚本家のオ・ジョンミさんが『納屋を焼く』を原作にしてみたらどうか?と言って下さり、結末も曖昧な作品だからこそ、物語を拡げて何層にもミステリアスな部分を重ね、人生のミステリーとして作り上げることができるのではないかと思うようになりました」とコメント。
また、村上春樹の存在については「新しい目と自由な想像力を持った村上さんの小説は多くの人に影響を与え、韓国では“ハルキ”と、愛称を越えた名詞のように呼んでいます。洗練され、クールな人生の象徴のようで、それまでの文学とは違っていたし、複雑で曖昧になった世界に必要な文学と感じました」と語り、主人公3人については「豊かさを享受しながらも満足していないベンと不安な思いと無力さを感じているジョンスは、どちらも空しさを抱えて生きており、その間に存在するヘミは生活が苦しいながらも人生の意味や美しさを唯一探し求めている存在として描きたいと思いました」と説明。
ここで、村上春樹原作の「ハナレイ・ベイ」で主演を務めている吉田羊が登壇し、「昨日は一睡もできませんでした(笑)。監督の『オアシス』が大好きで、折に触れて見返しているのですが、その度にいろんな感情がわいて、新鮮に観られるので、そんな作品を作る監督にお会いできて嬉しいです!」と興奮気味に挨拶し、監督から「『ハナレイ・ベイ』を通して吉田さんを知りました。原作も素晴らしいのですが、吉田さんの振れ幅の広さを感じ、感動しました」と称賛されると、「身にあまる光栄です」と恐縮しきり。
また、「バーニング 劇場版」を既に鑑賞済みという吉田は「スリリングでミステリアスな作品。村上さんの短編を長編映画にするのは大変だったかと思うのですが、大胆な解釈で描いて、村上さんにとってもこれが正解なんじゃないかと思うような説得力でした。俳優の生々しい芝居もどこまでがアドリブなのか、撮影現場で監督が演出される様子を見たいと思いました」と語りかけると、「ガッカリさせるかもしれませんが、特別なディレクションはしないんです。キャスティングが一番重要で、俳優にお任せすることがほとんどです」と監督も回答。
吉田は「俳優に力が無いと務まらないと思うので、ちょっと怖いですね」と戦々恐々だったが、監督は「吉田さんとも仕事をしてみたいですね。『ハナレイ・ベイ』を観て、いろんな姿を持っている素晴らしい女優さんだと感じましたし、どんな性格の役柄も消化できそう」と期待を寄せた。なお本作は、NHKでの日本語吹替短縮版の先行放映を経て、完全版として劇場公開される。
公開情報 | ツイン配給「バーニング 劇場版」は2019年2月1日(金)TOHOシネマズシャンテ他全国公開 公式サイト:http://burning-movie.jp/ |
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