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これからの社会への願いを込めた作品「PLAN 75」日本外国特派員協会会見(2022.06.08)

「第75回カンヌ国際映画祭」ある視点部門でカメラドール特別表彰を授与された早川千絵監督作「PLAN 75」の記者会見が日本外国特派員協会で6月7日(火)に行われ、早川監督、水野詠子プロデューサー、出演者のステファニー・アリアンが登壇した。まず、カンヌでの受賞を受けて監督は、「日本、フランス、フィリピン、カタールの合作なので、カンヌでみんなが顔を合わせて上映に立ち会えたということが、何より嬉しかったです」と、コロナ禍での撮影だったこともあり、やっと関係者一同が会し、喜びもひとしおだった様子。

本作は、是枝裕和監督が初めて総合監修を務めたオムニバス映画「十年 Ten Years Japan」の一篇を新たに構築した早川監督オリジナル脚本による初長編映画。超高齢化社会に対応すべく、75歳以上が自ら生死を選択できる制度〈プラン75〉が施行され、その制度に大きく翻弄される人々の姿を描き出している。キャストには、倍賞千恵子、磯村勇斗、たかお鷹、河合優実らを迎えている。

製作の経緯について監督は「『十年 Ten Years Japan』の企画をいただく前から、『PLAN 75』を長編として作ろうと思っていました。短編では問題提議まではできたのですが、長編ではそれ以上のものにしなければいけないと思い、脚本を作りながら方向性を見つけるのに時間を要しました。脚本協力のジェイソン・グレイと議論を重ねていたところ、2019年にコロナが始まり、現実がフィクションを超えてしまいました」と当時を振り返った。

そして、「厳しい現実に直面して、不安を煽るような映画を作るべきか悩みましたが、希望のある物語にしたい、これからの社会への願いのようなものを込めたいと思いました」とし、会場に来場していたジェイソン・グレイ氏も「何度も書き直し、11〜12稿ぐらい重ね、これでOKという以上のもの、すなわち私たちが世界と共有したいメッセージが脚本に込められた、とスタッフ全員が納得した時にGoが出ました」と明かした。

試写会で作品を観終えたばかりの外国人記者や来場者からは、様々な質問が飛び出し、「安楽死や尊厳死をどう思うか」と聞かれた監督は、「この映画は安楽死や尊厳死の是非を問うているわけではないので、ここでお答えするのが良いのかは疑問ですが、人が死に対してどういう姿勢で臨むかは、他人が言うことではないと思っています」と答え、水野プロデューサーも「監督は、生きていること自体が尊いことで、誰かが命の線引きをするのはおかしい、全ての命を肯定したい。そういったメッセージを込めて映画を作りたいと言っていました」と明かした。

日本で介護職に就くフィリピン人女性を演じたアリアンは「この映画は死と同時に、生きている中には素晴らしい瞬間がある、ということを描いていて、これから生きていこう!という原動力になる作品」とコメント。監督は「日本に来ているフィリピンの人々は、家族の絆やコミュニティの繋がりが強くて、助けを求められたら直ぐに助ける、そんな思いやりの精神が日本では失われてきていると感じ、彼女たちを描くことが大事な要素となりました」と語った。

また、監督は小学生の頃に観た、小栗康平監督の「泥の河」に影響を受けたそうで、「子供として感じているけれど、言葉にならない感情が描かれていると思い、この映画を作った人は私の気持ちをわかってくれていると思いました。それから映画を観るようになり、世界には自分の眼差しと同じように見ている誰かがいる、映画は時間も場所も越えたメディア、芸術なんじゃないかと思い、いつか自分もそういう映画を作りたいと思うようになりました」と明かした。

公開情報 ハピネットファントム・スタジオ配給「PLAN 75」は2022年6月17日(金)から新宿ピカデリー他全国公開
公式サイト:https://happinet-phantom.com/plan75/

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